機関誌『心霊研究』
機関誌『心霊研究』は、1947 年(昭和22年)2月に創刊。その起源は日本の心霊主義運動を主導した浅野和三郎が1923(大正 12)年に創立した心霊科学研究会の機関誌『心霊研究』に遡ります。関東大震災によってわずか 3 号 で廃刊。その後、『心霊界』、『心霊と人生』と名称を変えながら継続されました。
『心霊研究』は、戦後、日本心霊科学協会の発足とともに復刊され、2022 年に通巻900 号を達成しています。
日本の心霊研究の歴史とともに歩んできた雑誌です。
機関誌『心霊研究』について

1947(昭和22)年の創刊以来、『心霊研究』は広く心霊に関わる研究や文化を中心に扱った心霊専門雑誌として毎月発行されてきました。その歴史は1923(大正12)年3月に創設された心霊科学研究会の機関誌『心霊研究』にまで遡ります。
日本における心霊研究の先駆である浅野和三郎を主幹として創刊された『心霊研究』は、当時まだ珍しかった心霊に関する知識を読者に分かりやすく伝えることが目的とされていました。その年の9月に起こった関東大震災によって、『心霊研究』はわずか3号で廃刊となってしまいましたが、その後、『心霊界』『心霊と人生』と名を改めながら、第二次世界大戦中まで刊行が継続されました。
1946(昭和21)年12月に日本心霊科学協会が発足すると戦後の紙不足にもかかわらず、翌年2月には新たな機関誌として『心霊研究』が創刊されました。巻頭言では、戦後の混乱した社会にこそ目に見えない世界に目を開き、新たな真理を発見することの必要性が主張されています。
2022(令和4)年には通巻900号を迎え、現在に至るまで毎号幅広い執筆陣を迎えた多彩な記事が掲載されてきました。
『心霊研究』の歴史は協会の歴史、ひいては日本における心霊研究の歴史とともにあると言っても過言ではありません。
『心霊研究』前史 1923-1944
1923(大正12)年3月、東京・神田の学士会館で産声をあげた心霊科学研究会はその年の7月に日本で初めて心霊を専門に扱った月刊誌『心霊研究』を創刊しました。編集を担当したのは発起人の一人で、心霊科学研究会の中心的人物だった元海軍機関学校教官の浅野和三郎です。『心霊研究』では、西洋のスピリチュアリズムやサイキカルリサーチの紹介を通して当時まだほとんど知られていなかった心霊に関する知識の普及に努めるとともに、読者からの心霊体験募集などを通して国内の事例の収集も目的としていました。A5判で創刊号は80ページ、2号、3号は130ページを超える大部な作りで、各号の目次欄を見てもその充実した内容から、浅野がどれだけこの雑誌に熱を入れていたが分かります。ところが、そんな努力も虚しく、ようやく刊行が軌道に乗り始めていた同年の9月1日、不幸にも関東大震災によって心霊科学研究会の事務所が被災し、集まっていた原稿や資料も全て焼失してしまいました。誕生したばかりの『心霊研究』は創刊からわずか2か月、たった3号刊行しただけでやむを得ず廃刊となってしまったのです。
しかし、雑誌そのものが潰えたわけではありませんでした。東京での活動存続は難しいと判断した浅野は大阪へと拠点を移し、1924(大正13)年2月、震災からわずか5か月ほどで新たな月刊誌『心霊界』として復刊させたのです。「本誌は『心霊研究』の単なる改題と言はんより、寧ろその化身であり、変形であります」(『心霊界』創刊号、1924年2月)という「発刊の辞」でも述べられているように、『心霊界』は心霊に関する知識の普及と資料収集という前誌の目的を継承しながらも、より社会に広く関わっていく総合誌を目指して政治や社会問題についての論説も盛んに掲載されていました。
やがて浅野和三郎が神奈川県橘樹郡鶴見町(現、横浜市鶴見区)に居宅を移したことをきっかけに、1925(大正14)年7月から新たに『心霊と人生』と改題されました。内容は引き続き、国内外の心霊に関する研究報告や知識の普及、読者による心霊資料の投稿などが中心でした。また、「各地便り」では全国の支部や実験会の活動報告が掲載され、会員の交流の場としても機能していました。編集を担っていた浅野和三郎が1937(昭和12)年2月に亡くなると実兄の浅野正恭によって継続されました。日中戦争下には読者から投稿された戦場での心霊体験など貴重な報告が寄せられていますが、太平洋戦争勃発後は紙不足によって継続が困難になり、1944年1月には休刊を余儀なくされました。1949(昭和24)年4月に脇長男によって『心霊と人生』が復刊されましたが、脇の逝去によって1978(昭和53)年12月号をもって休刊しています。
1923(大正12)年
心霊科学研究会発行
『心霊研究』創刊号
1924(大正13)年
『心霊界』創刊号
1925(大正14)年夏に
『心霊界』が『心霊と人生』に
改題
日本心霊科学協会の機関誌として
第一期(1947年~1950年代)
1946(昭和21)年12月に新たに日本心霊科学協会が設立されると、その翌年、1947(昭和22)年2月に機関誌として新たに『心霊研究』が創刊されました。誌名は心霊科学研究会が最初に刊行した雑誌から取っており、心霊に関する知識の普及と研究の場を目指すという浅野和三郎の意志を継承するものでした。
初期の編集担当者は戦前の『心霊と人生』にも携わっていた脇長生で、1948(昭和23)年6月に彼が編集から退いて以降は、同じく戦前の心霊科学研究会で活躍していた粕川章子が編集を引き継ぐことになります。粕川は1960年代後半まで20年近く編集を担当し、その語学力を活かして当時まだ国内ではあまり知られていなかったスピリチュアル・ヒーラーのハリー・エドワーズによる講演や、アメリカの心霊研究家ヒアウォード・キャリントンの著書の翻訳を掲載するなど海外の心霊研究の紹介に努めました。
『心霊研究』創刊号
(1947年1月)
創刊号奥付
設立役員名記載
創刊号の巻頭
「なぜ日本心霊科学協会協會は
発足したか」
第二期(1960年代~1970年代)
1965(昭和40)年1月からは新たに編集担当となった岡田光生によって表紙デザインが刷新されます。内容に関しても毎号テーマに沿った特集が組まれるようになり、「文芸にあらわれた心霊思想」(No.216、1965年2月)、「易占と心霊」(No.218、1965年4月)、「天狗と語る」(No.224、1965年6月)のように、読者の興味関心を惹くようなユニークな特集号が発刊されました。
この時期には1968(昭和43)年3月から協会有志によって結成された「勝五郎研究グループ」による江戸時代の生まれ変わり騒動の実地調査報告が掲載されました。「研究とその資料 勝五郎再生の実地調査」(No.261~279)と題されたこの連載は現在においても貴重な研究資料として高く評価されています。
1972(昭和47)年7月には新たに編集委員会が発足し、翌年1月には新たな表紙デザインへと変更されました。
1965年1月号から表紙変更
1968年11月号No.261
1970年5月号No.279
第三期(1980年代~1990年代)
1980年代初頭は先駆的なスピリチュアリズム研究者として知られる梅原伸太郎による編集のもと、作家の三浦清宏やフランス文学者の平野威馬雄、超能力少年として話題を集めた清田益章など多彩な執筆陣が誌面を彩りました。とりわけ1984(昭和59)年1月から1986(昭和61)年9月まで断続的に連載された宗教哲学者・鎌田東二による「平田篤胤の心霊研究」は後に加筆され、『平田篤胤の神界フィールドワーク』(作品社、2002年)として刊行されました。
1990年代には協会理事の浅間一男を中心とする編集委員会によって刊行が行われます。古武術研究者で思想家の甲野善紀による「体応感応」(No.522-523 1990(平成2)年8-9月号)や民俗学者の宮田登による講演録「民俗学から見た霊魂観」(No. 550 1992(平成4)年12月号)など、協会外部の専門家による論考は従来の心霊に対して、これまでとは違った視点をもたらし、『心霊研究』の裾野を広げることにも繋がりました。
その一方で、滝川登志夫による連載「初めて心霊に接する人のために」(No.516-536 1990(平成2)年2月~翌年10月)のように、初学者に向けての心霊に関する知識の普及という創刊当時の目的も忘れられていませんでした。
1973年1月から表紙デザイン
変更。1973年から1980年代の
デザイン
1979年6月号 No.388三浦清宏
「エンフィールド・
ポルターガイストをめぐって」
1984年1月号 No.443鎌田東二
「平田篤胤の心霊研究1」
第四期(2000年代~2010年代)
2000年代以降の『心霊研究』も弓場利一郎「心霊研究入門」(No.639-644 2000(平成12)年5月~10月)のように心霊研究に関する基礎的な知識の拡充に努める一方で、そこから宗教学や心理学や文化人類学といった隣接領域へと読者の視野を拡大させるような論考が掲載されています。なかでも、2009年から2014年まで長きにわたって掲載が行われた宗教人類学者でシャーマニズム研究の第一人者である佐々木宏幹の論考は、憑霊現象を文化人類学の立場から考察し、シャーマニズム研究の中に位置づける先駆的な試みとして評価されています(「憑霊とシャーマン 宗教人類学ノート」(No.777-793 2011(平成23)年11月~2013(平成25)年3月)。
また、この時期には竹内満朋や萩原真、津田江山など歴史の中に埋もれた戦前の物理霊媒や霊能者の掘り起こしも行われました。「萩原真氏の物理的心霊現象実験記録」(No.768-777 2011(平成23)年2月~11月)や「津田江山氏の物理的心霊現象実験記録」(No.769 2011(平成23)年3月)は戦後の『心霊研究』の記事の再掲載ですが、実験に関わった当事者がいない現代において非常に重要な記録史料になっています。
そうした日本の心霊研究史を回顧する一方で、半田栄一「モラルとスピリチュアリティ」(No.746 2009(平成21)年4月号)や瀬尾育弐「パワースポット調査紀行」(No.851~859 2018(平成30)年1月~9月)などは現代社会の宗教的実践や流行現象に対して心霊科学協会ならではのアプローチや知見を示すものでした。
1991年1月号
表紙デザイン変更
2000年5月号
弓場利一郎「心霊研究入門」
開始号
2011年11月号
No.777佐々木宏幹
「憑霊とシャーマン─
宗教人類学ノート」
現在 2025
2025(令和7)年からは新たに日本近代文学・文化史研究者の一柳廣孝を中心とした編集委員会が発足し、これまでの講演録や研究論文に加えて、より広義に心霊を捉えた独自性のある論考や企画が数多く生み出されました。
田部井隼人による連載「書庫を開く」(No.940 2025年6月~)では、これまで心霊科学協会の書庫に秘蔵されてきた貴重な文献資料を取り上げ、その魅力と史料的価値について解き明かしています。羽仁礼「世界ふしぎ話」(No.947 2026(令和8)年1月~)ではUFOやオランダの治療師、『アラビアン・ナイト』で有名なジンなど、世界各地の「ふしぎ」にまつわるエピソードが幅広く紹介されています。
他にも、協会の関係者や会員がお勧めの一冊を紹介する「わたしの一冊」や心霊に関わる本や漫画、さらには音楽まで、ノンジャンルで紹介する「Psychic Science CULTURE CLUB」など、毎号オリジナリティある記事が掲載されています。
一世紀以上の前史と半世紀以上の歴史を持つ『心霊研究』は心霊に関わる知識や文化の発展という初志を受け継ぎつつ、これからも日本心霊科学協会の機関誌として、読者の期待に応えながら刊行を続けていきます。
2018年から表紙デザイン変更。写真は2026年4月で950号発行。