心が事物を感じて動揺する時は、疑心暗鬼を生ずる-の喩えの如く、見る物聞くもの、皆我を脅かす如く、壁に掛けてある弓の影も、誤って蛇に見えるし、草叢の中に横たわっている石も、伏している虎とも見えます。
これ何故かと言うに、皆自己の心の迷い、動きによって、世の中のもの凡て、我を害せんとする殺気を含んでいると、誤り思うのであります。
一度、心が落ち着いて、平静に帰すれば、彼の凶悪暴戻極まりなきと思った虎も心よき枕席となり、又、あの喧しい蛙の鳴き声もうるさくなく、面白い音楽として、聞きほれる事にもなります。
この事は、我が心の平静な為で、目に触れ耳に接する凡ての事物は、悉く是皆、神の妙技を現わすものに外なりません。
要するに、天地間の万物は、皆是我が心の反影と、見る事が出来ます。
(上巻268~269頁、昭和47年、Copyright © 2004 公益財団法人日本心霊科学協会)